パリ北駅着、"悪"印象 "Bad" Impressions <パリ家族旅行記第1日(2)>

パリ北駅着、印象

パリ北駅着、印象

  • 列車はフランス時間の15時59分に、パリ北駅Gare du Nordに滑り込んだ。「TEE=Trans Europe Express ヨーロッパ国際特急」が発着するターミナル駅として、子供のころ憧れていたパリ北駅にとうとうやってきた(少年向けの「世界の鉄道」の本にたびたび登場していたのだ。パリでは他に「リヨン駅」「オーステルリッツ駅」なんかが紹介されていた)。フランス国鉄の看板列車「ミストラル」号や「アキテーヌ」号。ドイツ国鉄の「ライン・ゴールド」「ヴァン・ベートーベン」、イタリアの名列車「セッテベロ」、スペインの軌間可変列車「カタラン・タルゴ」「バルセロナ・タルゴ」、豪華夜行列車「トラン・ブリュ」。いつかこれらの特急列車に乗ってヨーロッパを旅することを夢見ていたが、実現したのはTGV時代の21世紀、ユーロスタードーバー海峡をくぐって訪れることになろうとは予想もしていなかった。「入国手続き」があるのかな、と思っていたら何もなくそのまま出口へ。手続きはWaterlooでの乗車前に全て済んでいたのだ。そういえば係官は"Bon jour"と言っていたではないか。あれはフランス共和国の役人だったのだ。空港と違って英仏間に限定された出入国なのでチェックする側も簡単なのである。とりあえずハーゲンダッツでしばし休憩しながらホテルの場所など確かめる。蒸し暑い。爽やかなイギリスの夏と比べると、まるで日本のようである。
  • タクシーでホテルに向かうつもりだったが乗り場にはタクシーは1台もなく、車を待つ人々の長い行列ができていた。「メトロ(地下鉄)で行こうよ」とKumiに提案したら予想外に簡単に同意。荷物は重いし子供を連れているので今までだったら、たとえ長時間待とうとも手間のないタクシーを選んでいたのだが、初めての国、初めての都会で最初から地下鉄に乗るなど、この1年間のイギリス生活でみんな少し逞しくなったようである。メトロ乗り場を探して階段を下りる。あまり予習していなかったこともあり、フランス語表示ばかりで切符を買うのに戸惑っていたら、中年の男に声を掛けられた。
  • 結論を言うと、小額詐欺の被害に遭ってしまったのである。被害額は約4000円。警察に訴えるのもアホらしいし外貨の使い方は多少大雑把になるものなので実害は少ないのだが、騙したほうも多少の小遣いになる絶妙な金額。単純な手口にやられたのでとても悔しいし、恥ずかしいのだが、敢えてここに詳細を残しておきたい。男はどの切符が必要なのか("1day or 2days?")と聞いてきたが、ここで不用意に「2日券」と言ってしまった(「1回券でいい」と言っておけば被害はあり得なかった)。切符の選択だけやってくれるのかと思ったら、男は自分のクレジットカードを差し込んで「買ってくれた」のである。その時、券売機の画面に表示された金額(大人2人分で約30ユーロ)を示されて、直後に出てきた切符を渡されたのでよく確認する間もなかった。男は僕から代金を受け取って去っていった。とりあえず僕らはその切符を使ってホテルへ行き、チェックインをして部屋で旅装を解いたが、なんだか釈然としなかった。騙されたことが完全に判明したのは翌日。2日券のはずの切符が自動改札を通らなかったのである(「non valid」だったか、有効期限切れの意味の表示が出た)。つまり2日券の代金で「1回券」を掴まされたのだ。恐らく券売機の金額表示だけ見せて、実際には1回券のボタンを押したに違いない。クレジットカードなのでいくら払ったのかは見えない。「キョロキョロしている子連れで大荷物を持った日本人」など彼らには絶好のカモである(ネギを背負っているように見えたに違いない!)。旅慣れている皆さんはこんなのには決して引っかからないだろうけど、なかなか巧妙なのでくれぐれもご注意を!
  • HISのパックツアーで予約した「ホテル・コロナ・オペラ」はメトロGran Boulevards駅から歩いてすぐ、大通りから1本裏側の路地にあり、その一画は全てホテルが並んでいた。予約は特に問題なく、すぐに部屋に入ることができたが、エレベーターには驚いた。一応4人乗り、300kgまでの重量制限なのだが、奥行きが普通の半分ぐらいしかなくて一見2人しか乗れない。しかも1階の出入り口は外扉があり、それは「外開き」で手動で開けるのである!予約していたファミリールームは広く、トイレと浴室が分かれており概して清潔でなかなか良かった。今日は夕方6時を過ぎて、もう観光という感じではないので(日が長いので大人だけだったら十分可能なのだが)、ホテルの周囲を散歩して夕食だけ食べて戻ることにした。
  • 地下鉄駅近くにはカフェやクレープ屋がたくさん。お腹がすいていたので、歩きながらクレープでも食べようか、ということにした。フランスのクレープの生地を味わいたかったので、いちばんプレーンな「シュガー」と「ジャム」にする。まずはそのボリュームにびっくり。1つだけでよかった!一口食べて「美味い!」。ふっくらとしてとろけるような食感、しつこすぎないバターの香りと、絶妙な甘さ。イ●リス国で何か美味いものを見つけることは至難の技なのであるが、ここフランス共和国では、テキトーに選んだお店でもこんなに美味しいのだ。ドーバー海峡の隔たりはかくも大きいのである。

  • このままオペラ・ガルニエまで散歩しようと思っていたが、子供たちが疲れてしまったので食事にすることに。これは失敗。「明日から美味しいものを食べればいいから、今日は何でもいい」という方針でいたら、ユウの要望で「Osaka」という寿司屋に入ることになってしまった。ここは最悪。ネタは不味いし、シャリも固くてパラパラしていて、これなら"Waitrose"で売っているパック寿司のほうがマシ。最初に出てきた酷い「味噌汁モドキ」と「おしんこモドキ」で嫌な予感がしていたのだが。
  • ホテルに帰ってワールドカップを見て就寝。優勝候補のドイツとアルゼンチンが順当にベスト8に勝ちあがった。