さあ雪辱戦!

  • 前期の試験は散々だった。アサインメント(提出課題)はかなりの好成績がとれていたので試験もそこそこ対応できるのでは、という考えは甘く、なんとか合格点レベルにぶら下がった体たらく。2、3時間の限定された時間内に、課された設問に対する解答を小論文形式で答える、というのは非ネイティブには難しく、留学生組は概して苦戦した。ネイティブの連中に試験で水をあけられるのは悔しいが仕方がないとして、納得できなかったのは一部の中国・台湾勢が好成績をマークしていたことである(「国別対抗意識」のような狭い了見ではなくて、同じ非ネイティブ・東アジア人で、英語力もそんなに違わず、アサインメントでも負けているわけではないのに、なぜ僕らは出来なかったのか、という素朴な疑問)。
  • 試験後、Yoshiを中心にいろいろな人に「何がいけなかったのか」「次はどうやって取り組めばいいのか」を聞いたり飲みながら議論したりして、「後期試験は日本勢ももうちょっといいところを見せよう」という意識であれこれアイデアを出し合ってきた。まず共通する自覚症状としては「準備して覚えてきた内容を正確に再現して、正しい答えを書こう」としていたことである。好成績組のChineseに聞いたら「問題を前にして、何も分からず途方に暮れて、とにかく関連ありそうなことを考えて思いつくままに書いたら意外にいい点数がもらえて驚いた」。おそらく、いくら正確に書いても「当たり前のことを書いてるだけで何も君のオリジナルな意見がないじゃないか」と評価されてしまうようなのである。減点主義の教育で育った弊害。誤ったことを書くのを恐れず、自分が思うところをどんどん「足して」いくべきなのだ。
  • ある教授の見解では、「中国系は問題の意味を取り違えることが多い。一方、日本人は問題の意味は正確に捉えているのに、答えの文章の構造が悪くて点数を下げてしまう。英語の正確さは問題にしていない。要は構造である」。Pre-sessionalとIn-sessionalの英語クラスでお世話になったDirector(主任教師)のKathrineによると、「日本人は全般的に試験が出来ない。日本人は時間がたっぷりあればCreativeで質の高いものを作ることができるのに、試験のような短時間で瞬間的にアイデアを出すことができない。これは英語力の問題とは全く関係ない」。どうやら日本の教育システムから、文化や民族性にまで根ざしたfundamental(根源的)な問題なのであった。あと、答案用紙はきれいに書く必要はなく、とにかく読めればよいそうで、書き損じはペンで「バッテン」を打っておくぐらいの乱暴なやり方でよいらしい(常識だそうだ)。それも日本人には聞かないと分からない情報で、「丁寧な字でテスト用紙を埋める」ように育ってきた癖を捨てなければ短時間でまとまった量の文章を英語で書き上げることなど適わないのである。
  • それでも、ここまで教えてもらえれば何らかの対策の立てようはある。瞬間的にアイデアを出せないのであれば、それらしいオリジナルな答えを組み立てられるように、ビジネスでの実例も含めて事前に準備しておけばよい。初日の"Managing Human Resources"(人事組織論)は7題出題され、2題を選択して解答する。概ね出されそうな範囲が予測できており、2題決め打ちの準備も可能なのだが、少しひねられて答えにくい形で出題されるリスクを考慮して3題分以上の範囲はカバーしておかなければならない。
  • 1題は明確に出題の方向性が指定されていたので、これは決定(「Human Resource Managementはどのように企業戦略に結び付けられるのか」)。あと1題をどうするかが絞りきれず、「広く浅く」を承知で計5題分を深夜までかかって準備した。「準備」というのは、「予想問題」に対する解答の文章を小論文形式で(自分のオリジナルな意見や実例も含めて)作ってしまう、というもので、前期の反省を生かしている。日本人勉強会で手分けして作業したのだが、最終的には自分の頭で考えて自分の文章を作らないと本番で再現できない、と考えて、メンバーが作ってくれたレジュメや解答例を参考にしながらまとめなおした。まとめるのが精一杯で、読み直して覚えるまでの余裕は残せなかった。準備したのは他に「Corporate Culture(組織文化)」「Power & Politics(組織における権力と政治力学)」「Psychological Contract(雇用関係における暗黙の了解事項)」「Organisation Development(組織開発)」である。
  • さあ本番。出題を見てからの最終決定になるが、朝起きてからほぼ「組織開発」にしようと心に決めていた。この範囲の出題・採点担当のAlanは、悪い答案には情け容赦ない、という評判の人であり、これを選ぶのはリスクが大きいとも言えるが、アサインメントで徹底的に勉強しているので自分の理解度に最も自信があったからである。
  • 予定通り、「戦略との関連」と「組織開発」を解答した。出来については、これがど評価されるのか全く予測がつかないので決して自信があるとは言えないのだが、とにかく量は書くことができた。時間配分もほぼ完璧。答案も汚くなることを全く気にしなかった。さて、リベンジは成るであろうか。