Business etiquette in Tokyo

  • 大学の売店で久々に"The Economist"誌を購入した。付録に"Cities Guide essentials -- International and business etiquette"という別冊がついていて面白そうだったからだ。世界の主要都市をビジネスで訪れるときに知っておくべきエチケットを簡単に紹介した小冊子である(http://www.economist.com/cities)。紹介されている都市を全て挙げると、アトランタ、シカゴ、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコ、トロント、ワシントンDC、ブエノスアイレスメキシコシティサンパウロ、ベルリン、ブリュッセル、ロンドン、ミラノ、モスクワ、パリ、チューリヒ、ドバイ、ヨハネスブルク、テルアビブ、香港、ムンバイ、上海、シンガポールシドニー、東京の26都市。地域別のアルファベット順なのでたまたまなのだが、東京がトリを飾っている。
  • 今日はここに書かれている東京でのビジネス・エチケットを紹介してみたい。
    • 「お辞儀」にそれほど心配する必要はない。最近、多くの日本人ビジネス・パースンは握手をするからである。
    • 人を呼ぶときにファーストネームを使うのには注意が必要。ファーストネームはしばしば家族や親しい間柄に限られて使われるからである。一般的には姓に「san」を付けて呼ぶのがいちばんいいだろう(例 コイズミサン)。
    • 沈黙に苛々してはいけない。会話における「間」は日本でのコミュニケーションで重要な意味合いを持つからである。
    • ビジネスにおける服装は、古い世代においてはダークスーツにホワイトシャツがお決まりであったが、近年、東京の若い起業家たちは黒いTシャツに淡色のズボンを好み、ジャケット、ネクタイを嫌っている。オフ(週末含む)の服装はきちんとしたカジュアルがベストであり、だらしない服装は厳禁である。
    • いつも早めの行動を心がけること。約束の時間より少しだけ早めに現れる、というのがベストである。
    • 大声を上げないこと。せっかちな西洋人は、押しが強く落ち着きがないととられがちである。普通よりも少し、しかもそうとはっきりとは分からない程度にゆっくりめに話すこと。
    • 誰かが会議中に居眠りしていても腹を立てないこと。これはそれほど珍しいことではないのである。しかしながら、決して良い状況ではない。もしあなたがスピーチをするのなら、初めに「最後に質問をしていただきますよ」と明示しておけば、驚くべきことに聴衆はシャキッとするであろう。
    • 何事においても迅速な反応を期待してはいけない。意思決定は通常は合議制であり、その回答は、典型的には西洋におけるそれより大幅に時間がかかる。しかしながら日本においてはひとたび意思決定がなされると組織は円滑かつ迅速に決定を実行するのである。
    • 日本における「はい(Yes)」に混乱してはならない。「はい」はYes (Yes, I agree with you.または Yes, that is what I am going to do)と訳すことはできない。それよりは、「あなたがおっしゃったことは承りましたよ」(Yes, I hear what you are saying.)を意味することが多いのである。これが日本におけるコミュニケーションの混乱の元なのである。日本のコミュニケーションは調和を重んじるので、"No"を言うことはは特定の状況においては「ぶっきらぼうすぎる」ととられるのである。
    • 名刺を常に持ち歩くこと。相手があなたに名刺を渡したときあなたが名刺を渡さないことは、あなたが相手との関係を深めることに関心を持っていない、というシグナルになるからである。受け取った名刺は打ち合わせ中はあなたの前に置き続けること。名刺を片付けることは打ち合わせの終了を意味するからである。
    • 名刺はジャケットのポケットから出すべきであり、ズボンのポケットから出してはならない。また、裏面に日本語で印刷しておくことはとてもよいマナーである。
    • 日本のビジネスにおける「贈り物」は、西洋にはない地位を占めている。名の通ったブランド(ハロッズティファニー)の品を丁寧に美しくラッピングすること。見た目は少なくとも贈り物そのものと同程度に重要だからである。
    • 日本家屋や寺院の中では靴は脱ぐものである。客用のスリッパが準備されている。決まった場所で靴を脱いで(つま先を外に向けておくこと)部屋に入る。畳の部屋に入るときはスリッパも脱ぐ(畳の上では裸足か靴下のみが許される)。靴に関するアクシデント(誰かが間違えて自分の靴をはいていってしまう)はよくあることである。あなたが西洋人のデカ足であればそんな心配もないだろうけど。
    • タクシーに乗るときは最も重要な人が真ん中に座る。お付きの人間を両側に従えるのである。タクシーのドアの開閉を自分で行ってはならない。運転手が気を付けてくれるだろうけど。
    • 昼間における日本人の「個人空間」は影の長さであり、西洋人の感覚より広い。地下鉄の中においてもである(但しかの有名なラッシュアワーは例外である。ラッシュにおいては全てのルールが破られる)。
  • 頷ける部分、言われてみて「なるほど」と思う部分、ちょっとステレオタイプかな、と思う部分などいろいろだが、「神秘」や「イロモノ」でない、ビジネスの感覚で西洋人が見た日本を読んでみるのは気付きがあって面白い。まだ他は読んでいないのだが、我々から見たら同じ文化に思えるアメリカとイギリスの間でも誤解や摩擦はあるのだという。他都市のページからも、面白いものをピックアップしてたまに紹介してみたいと思う。でもこれ読んでから初めて東京に来る人ってかえって構えてぎこちなくなっちゃうんじゃないだろうか。