WEB2.0後の世界は...
- 実はWEB2.0という言葉もその意味するところも知らなかったのだが、1年以上素人ブログを続けてきて、何とはなしに「インターネットの世界の変化」みたいなものは感じていた。本書についてはoratakiさんのブログ『こんさーる日記 2006』および『「世話役」コンサルタント ブッシー大統領の人的・知的交流記録』における書評に触発されて読まずにはいられなくなり、Kumiの実家へ送るようAmazonへ注文して他の「物資」とともにイギリスへ送ってもらったものである。
- お二人の鋭い書評がほぼ全てを語りつくしているので今さら僕が付け加えることもあまりないのだが、ぼんやりと感じていた「変化」の正体を「大変化の潮流」として深層から分かりやすく、体系的に説き明かした必読の書である。「チープ革命」がもたらした総表現社会。グーグルが追求する「世界中の情報を整理し尽くす」技術革命により、インターネットの「玉石混淆」の情報の海(1997年時点では『インターネットはからっぽの洞窟』説も有力であった)から「玉」を的確に(しかも必要な人にタイムリーに)抽出することが可能になった。さらに著者の言う「自動秩序形成機能」が進化すれば、黙っていても(能動的に動かなくても)必要な情報が編集されて(しかもカスタマイズされて)届けられるようになるかもしれない。
- グーグルの描く戦略は巨大でダイナミックである。われわれが抱いている「最も優秀な検索エンジン」という概念を遥かに超える驚くべき構想が着々と進められている。その壮大さは、グーグルに勤める著者の友人が語ったという、
世界政府っていうものが仮にあるとして、そこで開発しなければならないはずのシステムは全部グーグルで作ろう。それがグーグル開発陣に与えられているミッションなんだよね
- という言葉に尽きるだろう。先日Timの家で”Google Earth”を試してみて、Tim、Ashley、Martinの3人に「これが中山競馬場という日本の有名なRace Courseだよ」と示すことができて盛り上がったのだが、これを一企業が作ったというのは大変なことだと思った。
- グーグルやAmazonが主導する”Web2.0”と総称される革命は、本書の主旨のように、確かに世界の仕組みをゆっくりと変えていくだろうと思われる。心配なのはその来るべき大変化に対する日本の感度の鈍さである。新しいものが社会に出てきて定着しようとするとき、それを使っていない層、理解していない層(得てして社会のエスタブリッシュ)からネガティブな反応が現れる。新たな犯罪を助長する云々(既存の報道メディアもことさらに強調したりするのだ。先日の中津川における高校生が中学生を殺した痛ましい事件でも「ブログ」が直接の原因であるかのように読める記事が書かれていた)。新たな技術が犯罪を生んでいるのではなく、その手段が変わったにすぎないのに。その意味ではアメリカの、そしてグーグルのインターネットに対する楽観主義には同感できるのだが、僕は手放しで楽観はしていない。不安なのは一般の犯罪ではなく、「情報支配」の一極集中である。僕はグーグルに「世界政府」のシステムを独占してほしくはない。グーグルは「決して人間は介さず、全てコンピュータに任せる仕組みなので、情報によって人を支配するなどということは毛頭考えていない」と杞憂であることを強調するが本当にそうか。実際にこれまでも中国政府への政治的配慮などでプログラムを操作したりしているではないか。これはグーグルのことではなく変化一般への不安であるが、「富の再分配」は逆に新たな格差をもたらさないか。格差社会において「情報リテラシー格差」もさらに拡大し、その差がもろに経済格差に影響する社会。さらに僕の不安はSFチックな世界に飛んだ。コンピュータに任せる仕組みが遠い将来「AIによる人間支配」の種になった、なんていう「マトリックス」のような未来世界だけは勘弁してほしい。
- 作者: 梅田望夫
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