生傷が絶えない

  • イギリスに来てから子供たちは随分と身体が丈夫になった。渡英直後にナオが40度の高熱を出して救急病院に駆け込んだのが1回、ユウはウィルス性の発疹1回と発熱1回で、その他には軽い風邪をたまに引くぐらいで病院、医院にはかかっていない。イギリスでは医院にかかるのにいちいち予約が必要だったりして面倒なので(だから救急外来が混雑する)、子供たちの身体も「風邪なんて引いていられない」と認識したに違いない。
  • これでもう帰国までは病院にかからなくて済むかな、というのは甘い考えであった。元気が余りすぎての怪我、というのがあったのである。先週ナオが顔をぶつけて口の中を切ったときは様子をみることにしたのだが、昨日ユウがシャワー上がりにふざけていて頭を柱に強打して再びの流血騒動になってしまった。
  • 泣き叫ぶユウをなだめながら血を止め、傷口を見ると浅くない。血は止まったが、「病院に行って縫った方がよさそうだ」という結論に達して晩御飯はお預けでGeneral Hospital(大学病院)へ駆けつけた。「縫う」という言葉を聞いたユウは「針で刺すのは絶対にいやだ。お願いだから縫わないで」と大騒ぎ。どうにかなだめすかして車に乗せて病院へ。
  • 病院はそれほど混んでいなかったが、外科の治療ができる先生が限られているのか、なかなか順番が回ってこない。6時過ぎに病院に着いたのに、診察・治療は8時過ぎ。救急外来の待ち時間はイギリスの医療制度が抱える問題の一つである。待合室には子供が遊べるプレイコーナーがあるし、急いでおやつも持ってきた。ユウはKumiによる応急手当を受けたし病院に着いてからは気持ちが落ち着いてすっかり復活してナオと遊んでいる。活字中毒の僕は外出のときは忘れずに本を持ち歩くので退屈対策も万全なのだが、Kumiが退屈してしまった。
  • 治療はあっけなかった。今は縫合ではなく、小さめのきずであれば「医療用の接着剤」のようなもので傷をくっつけることができるのであった。感心したのはあれだけ最初は嫌がって泣いたユウが治療の時には(縫う可能性も消えていなかったのに)全くジタバタせずに落ち着いていたことである。そういえば渡英前に虫歯を抜いたときも全く平静であった。今回も看護師さんや先生に「Braveな男の子だ」とさかんに褒められた。もう逃げられないと悟ったあとの肚の座り方は(親バカとは分かっているが)成長が感じられて嬉しかった。
  • でももうお願いだから勘弁してほしい。特に怪我をしても全く懲りた様子なく大胆な行動を繰り返すナオ。君のことだ!