泥沼?

  • 昨日明らかになった名人戦の主催紙変更問題は夕刊紙まで巻き込んだ騒動に発展している。夕刊紙が紙面を割いて(一般的には地味な将棋界を)報道するのは、中原誠永世十段林葉直子女流棋士の不倫騒動以来のことではないだろうか。日本にいないためWEBでしか確認できないのだが、第三者の読売、日経の報道が早く、遅れて当事者である毎日、朝日の記事が出た模様である。毎日新聞は記事の他に、契約解消通知書の撤回を求める編集局長アピール(『「毎日の名人戦」を守ります』)を載せる異例の事態となった。
  • 寝耳に水だった毎日はともかく、日本将棋連盟の発表と朝日の記事には若干のニュアンスの食い違いが見られる。連盟曰く「朝日から主催したい旨の申し入れがあって、理事会で検討の末受諾することにした」。朝日曰く「連盟からの打診が先にあって、それを受けて主催を申し入れた」。毎日との事前協議なし、という手続き無視の性急な発表を見るに、連盟が先に朝日に水を向けていたと考えるのが自然だろう。毎日と朝日の資金力や購読者数の差を考えたとき、「棋界の将来を考えて」という説明には納得がいくが、やはり毎日との再交渉、移管時期の調整(早くとも2008年度からにすべき)など契約に基づいた手順を踏まなければ「信義に反する」との謗りは免れ得ない。
  • 理事会の総意ということだが、既に連盟の財政状況がかなり窮している、という背景が想像できる。しかしながら、新聞社との棋譜掲載契約という古いビジネスモデルだけにしばられていては、仮に朝日との高額契約で一息ついたとしても抜本的な体質改善には至らないであろう。「普及」という地道な努力に加えて、マーケティングイノベーションや運営面、財務面の改善などを達成するには、棋士出身ではない「経営」の専門家を連盟に招聘するべきではないのか(コンサルタントは入っているのだろうか)。
  • 米長会長の棋風よろしく、まずい序盤から「作戦負け」のスタートに思えるが、なんとか「泥沼」を脱して、切れ味鋭い寄せで「さわやか」な収束を見せてもらいたいものである。

朝日新聞(記事)http://www.asahi.com/culture/update/0412/022.html
毎日新聞(記事)http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060413k0000m040096000c.html
毎日新聞(アピール)http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/shougi/news/20060413k0000m040103000c.html