ラスト・タンゴ・イン・パリ Last Tango in Paris <パリ家族旅行記最終日(2)>

Last Tango In Paris: Original MGM Motion Picture Soundtrack

Last Tango In Paris: Original MGM Motion Picture Soundtrack

  • 食事を終えたらもう1時過ぎ。これからホテルに戻って荷物を取り、北駅に向かわなければならないので忙しい。シャンゼリゼ凱旋門と反対方向に歩くとメトロのFranclin D. Roosebelt駅があるので、1本でホテル最寄のGran Boulevards駅まで行ける。入った出口(変な言い方だな)が1号線寄りだったので、1号線のホームを経由して9号線への乗り換え通路を歩く。今朝通った道と同じだ。朝と同じタンゴの響きが聞こえてきた。乗り換え通路でバンドネオンを演奏しているストリートミュージシャン(辻音楽師のほうがしっくりくる)のおじさんがいるのだ。思い出したのはレオス・カラックスの映画『汚れた血』のワン・シーン。ドニ・ラヴァン演じる主人公アレックスがメトロの通路を疾走するバックに、ゾルタン・コダーイのチェロ曲が流れるスリリングなシーンが鮮明に蘇ってきた。このチェロはストリートミュージシャンが奏でていたのであった。ポケットにあった50ユーロセント硬貨をユウに渡して楽器のケースに入れてくるように言った。するとおじさんはお礼に中国風のメロディーを演奏したのであった(「さくらさくら」など弾いてくれたら嬉しかったのだが)。
  • ホテルで荷物を取った後は、荷物とベビーカーを両方運ぶ難行となる。タクシーを使えば簡単なのだがここまできたら意地。メトロ9号線と4号線を乗り継いでパリ北駅Gare du Nordへ。手際よくイギリスへの入国手続きを済ませてユーロスターの待合室に入った。14時20分。1時間前までシャンゼリゼで食事をしていたことを考えると(そして小さい子供2人と大荷物を抱えて地下鉄を使ったのに)、我ながら要領のよい移動ができたと思う。お土産を物色したが待合室内はあまり充実していなかった(KumiはL'Occitaneで自分用の買い物)。チーズとワインぐらい買いたかったが荷物をこれ以上増やしたくないのであきらめた。
  • 今回のパリ旅行は、(予想通りではあったが)最低限のポイントをサラリと流しただけで終わってしまった。もちろんミシェル・ペトルチアーニのお墓参りなどできないし、辻邦生文学を思いながらのモンマルトル散策などあり得なかった。でもパリという「世界の都」の歩き方はこの3日間でなんとなく分かったので、次回への下見だと考えればいい。帰りのユーロスターでも肝心のユーロトンネルは眠っている間に通り過ぎてしまった。列車がイギリス国内に入ったときホッとした感覚に満たされた。一年前、初めての外国生活にカチコチに緊張しながらイギリスへ来たときのことを考えると、「帰ってきたな」と思えるようになったのだから不思議なものである。まだWaterlooからSouthamptonまで1時間半の行程が残っているのだが。(了)