ストーンヘンジへ日帰りドライブ

  • 気がつけば家族でのイギリス滞在ももう2ヶ月を切ってしまったが、大して旅行もできないまま1年が過ぎてしまった。「イギリス生活」という意味では、家族連れならではの「日常生活のすべて」を体験することができたが、逆に「非日常」の楽しみである「旅」や「エンターテインメント」のほうはさっぱりである。海外旅行は今月末のパリが初めてで、しかもたったの2泊3日。国内旅行ですら泊まりの旅行は2回きりである。僕がMBAのハードなカリキュラムで身動きがとれなかったのが最大の理由だが、息子も学校に行っているので僕と休みが合わなかったりしたこともある。
  • 7月に入ると家族の撤収(帰国)準備で忙しくなるので、もう出かけるチャンスはあまり残されていないし、遠出はパリ以外は無理だろう。そこで今日は日帰りで近場に出かけることにした。目的地は車で40分ほどのSalisburyの町とその近郊の世界遺産ストーンヘンジ」。Salisburyは以前にBathに行ったときに素通りしたが、訪れるのは初めてである。イギリスの田舎道のドライブはとても快適だ。ちょっと町をはずれるともう北海道のような広大な風景が広がり、馬や牛、羊を眺めながら気持ちよく走る。信号がほとんどなく、交差点もRoundaboutなのでほぼノンストップでいける。制限時速は一般道路でも60マイル=約90km(片側2車線だと70マイル=112km)で高速道路と変わらないので、みんな相当なスピードで飛ばす。ところどころに轢かれた動物の死骸が残っていたが、キツネか野うさぎの類だろうか。
  • Salisburyは大聖堂で有名な町だが、町歩きもなかなか面白い。大ショッピングセンターではなく、商店街的ショッピングエリアがなかなか充実しているのである。イギリス伝統の手工芸品などのお店もありあちこち冷やかしてから大聖堂のほうへぶらぶら歩く。ここ一週間で一気に夏がやってきて、日本と違って湿度が少なくて爽やかなのだが、日差しは強くて長時間歩いていると喉も渇くし疲れてしまう。イギリス人は「ここぞ」とばかりに、冬の太陽欠乏を補おうと男も女もお日様の下に肌をさらしている。あんな白い肌を焼いたりしたら染みになるし皮膚がんの原因になりそうだし、真っ赤になっているのを見ているだけで痛々しいのだが本人たちはお構いなしなので余計なお世話なのだ。
  • 大聖堂は外から眺めただけで入らずに、「陸軍博物館」という小さな博物館を見学した。ビルマでの日本軍との戦いの遺品や戦利品が飾られていた。この周辺からビルマに出征した人が多かったのだろうか。昼食は"Prezzo"というイタリアンレストランで。ここのパスタは麺も茹で具合もソースも本当に美味しかった。サイドメニューのサラダもパンもいける。ここはチェーン店らしくSouthamptonにもあるようなので、もう一回ぐらい行く機会がありそうだ。駐車場へ小川の畔の遊歩道を歩いて戻る。鴨や白鳥がいてWinchesterのようだ。今日はイングランドの初戦(対パラグアイ)があり、Pubでは午前中からビールを飲んでいる人々が多数。試合開始頃には頭をイングランド国旗の十字モヒカン(赤く染めて地肌は白く塗る)にした若者や、白いシャツに赤いスカートの女の子などが続々と繰り出してきた。


  • イングランド戦の経過も気になるが、次の目的地、古代遺跡「ストーンヘンジ」へ向かう。行ったことのある人に聞くと「がっかりしますよ」と言われることが多いのであまり期待はせずに。それに今日はみんなイングランド戦で家かPubに籠ってTVに噛り付いているはずなので観光地は空いているのではないか。Salisburyからストーンヘンジまではわずか12マイルの道のりだが、景色はさらに雄大に広がり、道東を走っているような気分になってきた。
  • ストーンヘンジの駐車場は混んでいた。観光バスが何台も乗り付けて団体客のおじさん、おばさんたちがひしめき合い、一転して日本の観光地と変わらない雰囲気に。聞こえてくる言葉はむしろ英語が少なく、外国人ばかりなのであった。彼らにはイングランド戦は関係ない。入場料金を払ってストーンヘンジの敷地内に入る。巨石たちは立ち入り禁止のロープで囲まれ、観光客はその周囲を歩いて眺めるようになっていた。期待せずに来たこともあって、それほどがっかりはしなかった。確かに想像していたよりも小さくて、「圧倒される」ような遺跡では決してない。でも「箱庭みたいでがっかり」という状況を想像していたのだが、周りが見渡す限りの放牧地という広々とした風景の中に置かれた巨石たちはなかなか絵になっていた。ストーンヘンジの周りの芝生では、寝そべって肌を焼いたり、昼寝している人々もいた。古代遺跡の目の前で昼寝、というのもなかなか素敵なアイデアである。楽しい夢が見られるかもしれない。